
「3Dプリンターを買いたいけれど、正直どの機種が良いかわからない」
そんな あなた に向けて、国内・海外問わずでブログやYouTubeを使って散々調べ上げた私の知見を共有します。
先に結論をまとめると、以下のとおりです。
・手軽に使えるのは熱溶解積層方式 [FDM方式]。
・光造形方式[UVレジン]はフィギュア制作などには○。ただし処理が大変です。
・FDM方式でのおすすめ機種の選び分けとして、
多機能・カスタマイズ性を求めるならEnder-3シリーズ、
デザインと省スペースを求めるならAdventurer3かSermoon V1 Pro
上記を元に、お値段・使える樹脂*・最大造形サイズで選べばOKです。
( * 詰まりやすい樹脂や高温での積層が必要な樹脂があります)
おすすめ商品の価格と特徴は下表のとおりです。

※一般的にダイレクト式の機種はボーデン式より軟質樹脂の失敗が少ない特徴があります(説明後述)
※Prusaファンの方&ANYCUBICユーザーの方、リストになくてすみません。英語&個人輸入がベースの機種になりますので「初めての1台」の選択肢からは外させていただきました。



なお、私はサポートとパチモノ商品のリスクを考えて国内の正規代理店から購入しました。
(Amazonにある「Creality 3D正品直営店」もカスタマーサービスの電話番号が中国(+86で始まる)とか普通にあって怖いデス・・・。)
各モデルの国内代理店のオンラインショップリンクはこちらです。
・Creality Ender-3 V2 Neo:PLAメインならコレ!
・Creality Ender-3 S1:ダイレクト式エクストルーダーで軟質樹脂もOK!
・Creality Ender-3 S1 Plus:ダイレクト式。大きなサイズ(30cm^3)の造形もOK!
・Creality Ender-3 S1 Pro: ダイレクト式。ノズル最高温度300℃。多様な樹脂が使えます!
・Creality Sermoon V1 Pro:ダイレクト式。ボックスタイプでデザイン良し!
・FLASHFORGE Adventurer3:ボーデン式。ボックスタイプでデザイン良し!
私は、省スペースとデザイン、軟質樹脂(TPU/TPE)が使えるという理由でCriality Sermoon V1 Proを選びました。
以下、詳細です。
3Dプリンターの選び方 造形方式について
家庭用3Dプリンターの造形方式はほぼ光造形方式と熱溶解積層方式の2種類です。
選び方は下記の通り。
- 透明で継ぎ目のない綺麗な造形を望むなら光造形方式。
- 多様な樹脂で印刷したいなら熱溶解方式。
光造形方式
UVレジンをレーザーなどで硬化して結像する方式です。
・高精度な造形です。フィギュアなどに最適
・UVレジンを使うので、臭い・アレルギー対策
・造形開始前の準備、造形終了後の後処理の面倒さ
・出来上がったモデルを部品として使う場合は、かなり脆い
熱溶解積層方式
高温で溶かした樹脂を積層していく方式です。
FDM方式(Fused Deposition Modeling)やFFF方式(Fused Filament Fabrication)と略して称されることもあります。
・手軽に多様な樹脂*で造形に使える
( * 多様な樹脂:失敗が少ない、耐候性が高い、弾力性がある、など)
・積層跡が発生する
熱溶解積層方式3Dプリンターのエクストルーダー(送り出し装置)について

熱溶解積層方式にはエクストルーダー(送り出し装置)の種類が2つあります。
1つめはボーデン式。
ボーデン式はヘッドとは離れた位置に送り出し装置があって、ボーデンチューブと呼ばれる管を通してフィラメントを送る方式です。
高速で移動し続けるヘッド部分とは離して送り出し装置を固定しておくことで、ヘッド部分が軽量にできます。
ヘッドを軽量にできるということは、ヘッドのブレが少なくできたり、コストダウンできたりするメリットがあります。但し、送り出し装置が離れているため、フィラメントの出し入れにズレが出てしまうため、糸引きが多くなってしまったり、軟質樹脂が途中で詰まってしまう問題が出やすかったりします。
もう一つはダイレクト式。
ヘッドと一緒に送り出し装置がユニット化されている方式です。
ヘッドユニットが重くなるため、パワーがあって制動能力が高い駆動装置が必要。したがってコスト高になるデメリットがあります。
その分、送り出し装置がノズルと近いのでフィラメントの制御がしやすく、軟質樹脂でも制御しやすいというメリットがあります。
3Dプリンターの選び方 熱溶解積層方式の候補機種は?
ここまで読んでくれてありがとうございます!
改めて選び方のチートシートを紹介します。

選び方その1:カスタマイズ性重視 場所ならある!>YES
絶対おすすめなのはCrealityのEnder-3シリーズです。
とにかく国内・海外ともユーザー数が多い。フィラメントごとの設定方法やトラブル時の情報が多いです。
また、カスタマイズ性が高いのも特徴。色々なパーツが売られていたり、有志によるカスタマイズ用の印刷データ提供があるので、自分でグレードアップもできます。
自分好みに改造したい方にはピッタリですね。
但し、本体サイズ+ベッドが動く分の場所を確保しないといけないので、そこそこ面積は取ります。
また、ケース(カバー)は別売品となります。
選び方その2:軟質樹脂も出力したい! 金ならある!>YES
カスタマイズ性重視かつ、やららかい樹脂も安定して出力したい!そんな あなたにはCreality Ender-3 S1シリーズが良いでしょう。
送り出し機(エクストルーダ)がダイレクトドライブ方式なのでTPUなどの軟質樹脂も安心して使えます。少々お高いですけれど高性能です。
自動レベリングが付いている点もポイント高いですね。
Creality Ender-3 S1

Creality Ender-3 S1はダイレクト式エクストルーダーを搭載した3Dプリンターです。
S1シリーズの中ではベーシックモデルとなりますが、出力可能な造形サイズも220×220×270mmと一般用途では十分でしょう。ノズル最高温度は260°C、ヒートベッド最高温度は100℃です。
なお、本体サイズは487×453×622mmです。
国内代理店のオンラインショップリンクはこちら↓です。
・Creality Ender-3 S1:ダイレクト式エクストルーダーで軟質樹脂もOK!
Creality Ender-3 S1 Plus

Creality Ender-3 S1 Plusは S1の最大造形サイズが大きくなった機種です。
出力可能な造形サイズは300×300×300mmとかなり大きな印刷が可能です。ノズル最高温度は260°C、ヒートベッド最高温度は100℃です。
その分、本体サイズはちょっと大きめの557×535×655mm。置く場所を確保してからポチりましょう。
国内代理店のオンラインショップリンクはこちら↓です。
・Creality Ender-3 S1 Plus:ダイレクト式。大きなサイズの造形もOK!
Creality Ender-3 S1 Pro

Creality Ender-3 S1 Proは S1のノズル温度やヒートベッド温度を高くした機種です。
ノズル最高温度は300°C、ヒートベッド最高温度は110℃です。高温での成形が必要な樹脂にも対応できます。
なお、出力可能な造形サイズは220×220×270mm、本体サイズは487×453×622mmでS1と同じです。
国内代理店のオンラインショップリンクはこちら↓です。
・Creality Ender-3 S1 Pro: ダイレクト式。ノズル最高温度300℃。多様な樹脂が使えます!
3機種の比較は下記の通りです。
Creality Ender-3 S1 | Creality Ender-3 S1 Plus | Creality Ender-3 S1 Pro | |
本体サイズ (XYZ)/mm | 487×453×622mm | 557×535×655mm | 487×453×622mm |
造形サイズ (XYZ)/mm | 220×220×270mm | 300×300×300mm | 220×220×270mm |
ダイレクト式/ ボーデン式 | ダイレクト式 | ダイレクト式 | ダイレクト式 |
ノズル 最高温度 | 260°C | 260°C | 300°C |
ヒートベッド最高温度 | 100℃ | 100℃ | 110℃ |
選び方その2:軟質樹脂も出力したい! 金ならある!>NO
基本的にPLAやABSが印刷できればOK、軟質樹脂は出力しないよ!という場合はEnder-3 V2もしくはEnder-3 V2 Neoが候補です。どちらもボーデン式エクストルーダーのため、比較的安価です。
なお、V2とV2 Neoの違いは自動レベリングとノブ式カラーディスプレイが付いているかどうかです。
国内代理店のオンラインショップリンクはこちら↓です。
・Creality Ender-3 V2:超コスパモデル!PLAメインならコレ!
・Creality Ender-3 V2 Neo:PLAメインならコレ!自動レベリング付き!
Creality Ender-3 V2 | Creality Ender-3 V2 Neo | |
本体サイズ (XYZ)/mm | 440 x 410 x 465 mm | 438 x 424 x 472mm |
造形サイズ (XYZ)/mm | 220 x 220 x 250 mm | 220 x 220 x 250 mm |
ダイレクト式/ ボーデン式 | ボーデン式 | ボーデン式 |
ノズル 最高温度 | 255°C | 260°C |
ヒートベッド最高温度 | 100℃ | 100℃ |
選び方その3:カスタマイズ性重視 場所ならある!>No
デザイン性重視で小型モデルを希望している あなた は、Box型の機種が良いでしょう。
デザイン家電のような佇まいもあり、リビングに置いておいてもOKです。
候補の機種はFLASHFORGE Adventurer3とCreality Sermoon V1 Proです。
選び方その3:ABS使いたい派? TPU使いたい派?
BOX型の2機種では、基本的にCreality Sermoon V1 Proの方がダイレクト式のためTPUなどの軟質樹脂も安心して印刷できます。が、ヒートベッド最高温度が80℃と低いため、ABSなど反りやすい樹脂はメーカーを選んだり、ベッドの定着力をあげる工夫が必要です。
よりコンパクトなモデルが欲しい場合はAdventurer3が良いです。ただし、最大造形サイズは150mm^3と小さめです。


FLASHFORGE Adventurer3 | Creality Sermoon V1 Pro | |
本体サイズ (XYZ)/mm | 388 × 340 × 405mm | 400 x 380 x 430 mm |
造形サイズ (XYZ)/mm | 150 x 150 x 150mm | 175 x 175 x 165 mm |
ダイレクト式/ ボーデン式 | ボーデン式 | ダイレクト式 |
ノズル 最高温度 | 240°C | 250°C |
ヒートベッド最高温度 | 100℃ | 80℃ |
3Dプリンターの選び方 フィラメントごとの各機種との相性
フィラメントは種類やメーカーごとに適正温度が違います。
つまり、印刷したモデルの利用用途によっては特定のフィラメントが使える必要があり、それに適した3Dプリンターを選ぶ必要があります。
例えば、耐候性に優れた樹脂を使いたいとなると、候補としてABSフィラメントが挙げられます。しかしABSフィラメントは反りやすいため、ヒートベッド温度が100℃以上の機種が望ましい。などの条件が発生します。
以下、機種ごとのノズル上限温度・ヒートベッド上限温度とフィラメントの適正ノズル温度・ヒートベッド温度を比べることで、機種ごとに使えるフィラメントを紹介していきます。
おすすめ3Dプリンター各機種のノズル最大温度・ヒートベッド最大温度は?
各機種のノズル上限温度・ヒートベッド上限温度は下記の通りです。


ノズル上限温度はBox型のAdventurer3とSermoon V1 Proがやや低く、それぞれ240℃、250℃です。また、ヒートベッド上限温度はSermoon V1 Proが80℃と少し低めの設定になっています。
これらの上限温度の違いを踏まえて、樹脂ごとの推奨温度との比較をしていきましょう。
3Dプリンターの選び方 PLAフィラメントの各機種との相性
まずは3Dプリンターで最もよく使われるPLA樹脂(ポリ乳酸:生分解性プラスチック)を見ましょう。
PLAの特徴は下記の通り。夏の車内に置いておくような用途には向かないかもしれませんね。
PLAは、硬度が高い反面、衝撃などにはあまり強くありません。そのため、衝撃が加わったり、柔軟性が必要とされるような製品には向かないのが特徴です。耐熱温度が低く、60℃程度でも力を加えると曲がってしまう場合があります。
荒川技研 株式会社
PLAの推奨印刷温度、推奨ヒートベッド温度は下記の通りです。さすがに3Dプリンターで一般的な素材とあって、どのプリンターでも問題なく出力できます。


上記PLAフィラメントのAmazonリンクはこちらです。
3Dプリンターの選び方 ABSフィラメントの各機種との相性
続いて、機械的特性と耐候性に優れたABSフィラメントです。
ABSの特徴は下記の通り。
https://i-maker.jp/blog/abs-filament-11479.html
- 優れた機械的特性
- ABSフィラメント材料の最大の強みは、優れた機械的特性です。安価である上に、強度や耐久性にすぐれています。特に、耐衝撃性、耐摩耗性、引張強度、靭性・曲げ疲労性が高く、耐熱性にも優れています。またキズなどもできることが少なく、「消耗品」に最適です。
- 後加工が簡単
- ABSフィラメントの強みとして、造形後の後加工が比較的容易です。表面の研磨や接着、塗装なども対応しています。またアセトンを使用すれば表面を加工することもできます。
なお、ABSは印刷時に臭いがしたり、反って失敗しやすかったりする、というデメリットもあります。
ABSの推奨印刷温度、推奨ヒートベッド温度は下記の通りです。


Sermoon V1 Proはヒートベッドの上限温度が80℃のため、やや厳しい印象です。
実際、海外のYoutuberが大きなサイズで反ってしまうのでSermoon V1 ProにABSやASAは適さない、という旨の動画をあげていました。(https://www.youtube.com/watch?v=E3_mJWAfx1c)
Adventurer3はメーカーを選ぶ必要があるかもしれません。
上記ABSフィラメントのAmazonリンクはこちらです。
3Dプリンターの選び方 ASAフィラメントの各機種との相性
お次も機械的特性と耐候性に優れたASAフィラメントです。
ASAの特徴は下記の通り。
モノキソ Raytech(レイテック)
- 長所
- 耐候性に優れる
- 優れた耐衝撃性
- 耐薬品性がある
- 加工性が良い
- 靭性がある
- 短所
- 温度管理が必要
- 反りやすく、プリント中の匂いがきつい
ASAも印刷時に臭いがしたり、反って失敗しやすかったりするようなので、少し難易度が高そうですね。
ASAの推奨印刷温度、推奨ヒートベッド温度は下記の通りです。


Sermoon V1 Pro、Adventurer3はメーカーを選べばなんとか印刷できるかな、という感じ。その他の機種は温度帯的にはOKですが、いずれにしてもベッドから剥がれないように工夫が必要そうですね。
上記ASAフィラメントのAmazonリンクはこちらです。
3Dプリンターの選び方 PETGフィラメントの各機種との相性
次はペットボトルの素材の仲間、PETGです。
耐候性・耐熱性ともに優れているため、ABS、ASAが使えない3Dプリンターやプリント環境(臭い)でも良い選択肢になりうると思います。
https://i-maker.jp/blog/petg-filament-11520.html
- PETGフィラメントの特性
- 強度に優れる
- 耐衝撃性に優れ耐久性が高い
- 耐熱性(80℃程度)
- 半透明で光沢のある見た目
- 優れたプリント適正(反りやゆがみが少ない)
- PETGフィラメントの弱み
- 表面が若干弱い
- 糸引きが起きる
PETGの推奨印刷温度、ヒートベッド温度は下記の通りです。


Sermoon V1 Proはヒートベッドが80℃までのため、許容範囲内ではありますが、反り・剥がれ対策はした方が良いかもしれません。また、eSUNよりSUNLUの方が推奨ヒートベッド温度が低めなので、Sermoon V1 Proを使う場合はSUNLUのPETGを選んだ方が良いかもしれませんね。
その他の機種については温度帯的には問題ないでしょう。
上記PETGフィラメントのAmazonリンクはこちらです。
3Dプリンターの選び方 TPU / TPEフィラメントの各機種との相性
最後は軟質樹脂であるTPU / TPEフィラメントです。
TPU / TPEフィラメントの特性は下記の通り。
https://i-maker.jp/blog/rubber-filament-11558.html
- 3Dプリンター用ゴム(エラストマー)の特性
- 耐摩耗性:高い耐摩耗性を誇る。
- 耐衝撃性:衝撃などに強い特性を持つ。
- 耐薬品性:酸やアルカリなど薬品による変化が少ない。
- 引張強度:引っ張った時にも破れにくい。
- 靭性・曲げ疲労性:ねじったり曲げたりした時にも壊れにくい。
TPU / TPEフィラメントは、その柔らかい特性のためボーデン式の送り出し装置(エクストルーダー)を使用している機種では出力が難しかったり、詰まりやすかったりします。ボーデン式のEnder-3 V2 / V2 NeoやAdventurer3では工夫して出力する必要があります。


印刷温度的にはどの機種もOKですので、あとはいかに詰まらせずに出力するか、の工夫次第でしょう。
上記TPU / TPEフィラメントのAmazonリンクはこちらです。
まとめ:おすすめ3Dプリンターの選び方。初めての1台はどれ?
以上、おすすめの3Dプリンターの選び方についてまとめました。
あなたに合った1台は決まりましたか?
正直、最初の1台目なので、買って・使って・別のが良い、となったらメルカリしちゃって買い替えるというのもアリだと思います。(そんなに値崩れしないようなので)
まずは1台、試しに3Dプリンターのある生活をしてみる、のはいかがでしょうか?
最後にもう一度、選択チートシートとフィラメント相性をまとめた表を載せておきます。
ご参考になれば幸いです。



各モデルの国内代理店のオンラインショップリンクはこちらです。
・Creality Ender-3 V2 Neo:PLAメインならコレ!
・Creality Ender-3 S1:ダイレクト式エクストルーダーで軟質樹脂もOK!
・Creality Ender-3 S1 Plus:ダイレクト式。大きなサイズ(30cm^3)の造形もOK!
・Creality Ender-3 S1 Pro: ダイレクト式。ノズル最高温度300℃。多様な樹脂が使えます!
・Creality Sermoon V1 Pro:ダイレクト式。ボックスタイプでデザイン良し!
・FLASHFORGE Adventurer3:ボーデン式。ボックスタイプでデザイン良し!
それでは〜。